@article{oai:senshu-u.repo.nii.ac.jp:00012562, author = {清水, 真志 and Shimizu, Masashi}, issue = {2}, journal = {専修経済学論集}, month = {Nov}, note = {これまで問屋制生産は,原理論では扱えない前近代的な生産体制でしかないと考えられてきた。しかし問屋制生産は,直接雇用を伴わないことを積極的に活かした方法によって,手工業者を実質的な賃銀労働者として活用し,独自の労務管理のシステムを構築する。問屋制生産は,封建的な手工業から機械制大工業への「過渡形態」にすぎないわけではなく,それら二種類の工業の「中間形態」として,資本主義的生産の内に固有の位置を占める。機械制大工業が確立された後にも,問屋制生産は形を変えて「再生産」され続けるのである。このように認識を改める場合,かつての問屋制家内工業の収奪的傾向の影に隠れて見えにくくなっていた,問屋制生産の合理的側面に光を投じなければならない。この側面は,アパレル産業や電子機器産業のように多品種生産が求められる産業部門で発揮されるが,これらの部門で求められる手工業的熟練の本質は,生産の手順・方法にかんして多様な「実施計画」を策定できるという頭脳労働的な熟練にある。それは肉体労働的な熟練とは違って,機械化による解体を簡単には受けつけないのである。 問屋商人の役割についても認識を改める必要がある。これまで問屋商人は,市場のことを知っているだけで,生産のことは何も知らず,伝統的な生産過程をただ間接的に支配するだけの存在と考えられてきた。しかし,市場向けの生産物の「基本構想」を決定できるのは,むしろ市場のことを知っている問屋商人だけである。集めた市場情報を素にして「基本構想」を練り上げ,それを生産者に伝えることに問屋商人の役割があることを踏まえると,「交通=通信」手段の発展がもつ意義に十分な評価を与えてこなかった従来の生産方法論には疑問が生じる。また,階層化された問屋組織の存在に十分な注意を向けてこなかった従来の重商主義段階論にも疑問が生じる。宇野の段階論が提示するのは,重商主義段階の問屋制家内工業が「思わざる結果」として産業資本の勃興を招き,自由主義段階への移行を準備したという命題である。この命題では,イギリス国内の生産関係が「資本主義的関係の実体」として重視される一方で,国際的な問屋組織や外国貿易のもつ意義は不当に軽視されてしまう。}, pages = {29--84}, title = {問屋制生産の原理と段階論(1)}, volume = {56}, year = {2021} }